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くらしかるあわー
物好きの物好きによる物好きの為の毒電波発信のべる。
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2024/05/02 (Thu) 00:37
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2010/04/08 (Thu) 22:17
 

僕たちの間に小さな沈黙が流れた。
両手に銃を構えた女学生は瞬き一つしないで、僕たちを凝視している。
吸い込まれそうなほどに真っ直ぐで、澄んだ綺麗な瞳だった。
「あれ……おかしいなあ。格好良く決まったと思ったのに……」
反応してほしかったのか、分かりやすく頭上に疑問符が並ぶ。
「な、なんなんだよ……お前!?」
「なんなんだと言われても、君たちが言うところでいう謎のXってやつ?」
「違う! 真面目に答えろ!! いきなり銃を突き出してきて、一体なんなんだよ?!」
自分でも驚くくらい、声を荒げていた。
さっきまで一人のん気な顔で食事していた奴とは思えない。
「修兵ちゃん、落ち着くんだぜぇ!」
意外にも奈々緒は冷静だった。
奈々緒に諭されるなんて夢にも思わなかった。
「くっ……」
「ま、驚くのも無理ないでしょうね」
構えていた銃をスカートの後ろに戻しながら、再び椅子に座りはじめた。
「とりあえず、自己紹介でもしましょうかしら」
「お願いするぜぇ」
「謎のXこと、青葉ハルカよ。好きなように呼んでもらって構わないわ」
青葉ハルカと名乗った女学生は、藤林と同じように手を差し出してきた。
……こいつが、僕たちを呼んだ張本人か。
「それで、君たちは椎名修兵に広瀬奈々緒ね。向こうにいるのが……」
「……今ここにいる全員のことは、既に知っているんだろ?」
「そうね、君たち以上に君たちのことを知っているわ」
気に食わない女だ。
僕たち以上に僕たちのことを知っているだと?
どうやって調べたのかは分からないが、本人以上に本人のことが分かるなんて馬鹿げている。
「お前に尋ねたいことがある」
「なにかしら? 学園に人がいない謎? 君たちを呼んだこと? 藤林さんをここに呼んだこと? 後輩の二人が何故くるか分かったこと? どれから先に聞きたいかしら?」
「――っ?!」
クソッ、人を馬鹿にして。
なんでもお見通しってわけですか。
「……まず、僕たちを呼んだことだ」
「最初に言っておくけど、私は騙してなんかいないわ。君たちは最初から補修は決まっていたの」
「信じられないな」
「どうぞご自由に。信じる信じないは君たちに任せるわ」
「じ、じゃありんりんを呼んだのは何故なんだぜぇ?」
「藤林さんは必要な人間だから呼んだ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
一瞬、何か引っかかることが頭を過ぎった。
しかし、それを考えている余裕なんて僕にあるはずがない。
「それはつまり、今僕たちがここにいるということは必要な人間に含まれているからなのか」
「ご名答、椎名さんも意外とクールね」
「ナナちゃんたちと瑛夏やん、小夜っちが来ることを、りんりんに教えたのはどうしてだぜぇ?」
「一番クールな人間に伝えるのは当然のことでしょ」
何が可笑しいのか、無邪気にくすくすと青葉遥は笑う。
初対面の人間に馬鹿にされるのがここまで腹の立つこととは……。
「……次だ。どうして小夜と瑛夏が教室にくることが分かった? 藤林に昨日の夜に伝えた段階では分かるはずなんてないだろ」
「いいえ、分かってたわ」
「何故?」
「分かっていたから」
ちっ……。
きっとこれ以上聞いたとしても同じような返答しか返ってこないだろう。
分かっていた、だと?
この女は未来予知でも出来るのかよ、馬鹿馬鹿しい。
「これで最後だ。この学園に人がいないのはなぜだ?」
学生一人がどうこうできるほど、この学園は学生数が少ないわけじゃない。
社林市全ての学生が通う学園だ、何か重大な事件でもない限り、教師含め学生を動かすなんてことは不可能だ。
……。
……重大な事件?
「おい、お前……まさか」
「さすが椎名さん。補習を受ける学生のわりにはクールね」
「いや、ナナちゃんはまったくわかんねぇ!」
「正真正銘お馬鹿なナオちゃんには懇切丁寧に教えてあげるわ」
「ちょっと待て。ナナちゃん、ナオと呼ばれるのは反吐が出るくらい大嫌いなんだ」
「奈々緒、黙れ」
「しゅーん」
「椎名さんのようにぶっ飛んだ人じゃないと思いつかないことよ」
たかが学生6人呼ぶ為に、そんなこと……まさか、ありえない。
「だーかーらー、さくっとナナちゃんにも教えてほしいぜぇ!」
「……事件だ」
「事件?」
「立てこもり、誘拐、殺人、なんでもいい。架空であれ大きな事件を作れば人は入ってこれない」
「そういうこと。あとはスパイスに様々な条件を加えることで、ほら、今の構図が完成でしょ」
なんて女だ……。
馬鹿げているにも程がある。
「ちなみに実際に事件なんて起こしてないから安心していいわ」
「どうしてこんなことをした……?」
「さっきも言ったでしょ、君たちが必要なの」
「僕たちはただの学生だぞ?!」
「いいえ、違うわ」
「じゃあ教えてくれ! どうして僕たちが必要なんだ?!」
「そうね……役者は揃ったことだし、そろそろ伝えてもいい頃合いかしら。そうは思わない、藤林さん?」
青葉が僕の後ろの方へ声をやった。
後ろを振り向くと、いつの間にか藤林たちがすぐ傍まで来ていた。
「そうだな、私もいい加減知りたかったのだよ。何故ゆえ私たちがここに呼ばれたのか、教えてもらえぬか、青葉とやら」
「あたしたちを置いて、勝手に話進めるなんていい度胸だよね」
「……私たちにも教えていただけませんか、謎のXさん」
「私も……知りたいです……!」
青葉は僕たち全員の顔を見回したあと、今までに見せたことのない真剣な顔つきになった。
「……いいわ。だけど、覚えておいて。これから先はもう普通の生活には戻れないということを」
ごくりと喉が鳴ってしまう。
立ち上がり、青葉が言った言葉はそれほど重く、冷たいものだった。

………。
……。
…。

青葉を先頭にして、僕らはどこかに向かっていた。
最初に来たときは3人だったのが、今は7人と2倍以上に増えている。
僕たちが必要と前を歩く青葉は言っていたけど、何故必要なのか未だにわからない。
お互いの面識さえなかった僕たちに、必要とされる共通のことなどあっただろうか。
……一体何を考えているんだ。
青葉遥。
さっきは気が昂っていて、よく見てなかったが、改めてみるとなかなか綺麗な顔だな。
なによりも綺麗なお椀型のおっぱいがたまらない。
これが日々の努力の賜物なのか、いや、分からないけど。
どこかの無乳娘と貧乳っ子に見習わせてやりたい。
「ね~、椎名。今変なこと考えてたでしょ? ううん、考えてたよね? 考えてたに違いない。なに、死ぬの? 他殺願望があるほどのDO・Mなの?」
「加勢するぞ、秋畠」
後ろのほうから殺意に満ちた二人の視線が感じる。
おいおいおい、お前らニュー○イプかよ?!
「そ、そんなこと間違っても思うはずないだろ」
「……嘘つきは少しでも嘘を言うとね、鼻の上に血管が浮き出るんだよ」
「嘘だろ、小夜?!」
そんな話はじめて聞いた。
咄嗟に鼻の上に血管があるか確かめてみる。
「……ああ嘘だぜ……だが、間抜けは見つかったようだな……!」
「――はっ?!」
「ふふ……ふふふ! 覚悟は出来ているよね、し・い・な?」
「死にはせん。少しの苦痛が伴うだけだ……だが、死ね!」
おいぃぃぃ、いつの間にこの二人はこんなに仲良くなったんだよ?!
「ぎゃぁぁぁーー!!」
無貧乳娘たちは、こんなに激しく動いても乳が揺れることはない、ああ、悲しいかな。
それからまた暫く意識を失って……は、無かった。
今日あれほど意識を飛ばされたんだ、少しくらい耐性もついてきたんだろう。
……あまり、嬉しいことではないが。
「ごふっ……」
「ふんだっ!」
「私だって……私だって……くぅ!」
強情な瑛夏と違って、藤林は実に素直に態度に表してるな……。
「し、椎名さん……大丈夫ですか? よろしかったら、これ……使ってください」
木之原が可愛らしいピンクのハンカチを取り出して、僕に渡してきた。
なんでこんなにも木之原は天使なんだ!
「大丈夫だよ。せっかくこんなに綺麗なハンカチを僕みたいな奴で汚すのは勿体ないだろ?」
「い、いえ! そんなことありませんっ! わっ、あ、きゃっ?!」
僕の手に直接渡そうとしてきた木之原が躓いて盛大に転んだ。
転んだことでスカートがめくれて、中の下着が見えてしまっている。
ぴ、ピンクの生地にネコさんがプリントされたパンツだとぉ?!
ガッデム!! 僕の期待を裏切らないじゃないか、木之原!
「木之原、大丈夫か?」
「いたた……あはは……ドジしちゃいました」
「いや、あの、それもなんだが……その、下着が」
「ほえ?」
「桜子ちゃーん!! ばんっ、つー、まる、みえ! だぜぇ!!」
「あわわ……あわわわわ……あわわわわわわわ!!」
……これは、木之原に悪いことしたな。
素直に受け取っておくべきだった。
「とりあえず、椎名とナナ先輩」
さっき以上に鋭く、空気が震えるほどの殺意を感じる。
「は……はひ」
「死ぬ覚悟は出来ているだろうな?」
「……特別に私も参加しちゃいます」
ブルータス、お前もか……!
「……椎名先輩には今朝見られた分も合わせて倍プッシュです」
「……どうやら僕たちはここまでのようだな、相棒」
「短い人生だったが、我が人生に一片の悔いなしだぜぇ!」
「いや、僕はあるわ」
「なんだって、椎名ちゃーん?!」
それから僕たちは突然途切れたラジオのように意識を失った。
「はぁ……緊張感の欠片もないわね……」
そんな青葉の声が聞こえてくるようだった。

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自己紹介:
倉子かるです。
Xbox360で遊んでいたりします。
紆余曲折しながら書いてます。
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