2010/03/26 (Fri) 19:00
黒。
暗闇は不安だ。
ただでさえ憔悴しきった僕に追い討ちをかけるようで。
息を切らし、どんなに走って逃げようともどこまでも追いついてくる。
出口の見えないトンネルに迷いこんでしまったのだろうか。
光が見えない。
だから黒は嫌いだ。
白。
一筋の光が見える。
たったそれだけの明かりなのに今の僕にはあまりに眩しすぎて、目がくらみそうで。
あれだけ嫌いだった黒が、遠い過去に思えて、懐かしくて。
それでもやっぱり僕は求めずにはいられない。
手を伸ばしたら、あの光を掴むことはできるのだろうか。
可能性は否定することは、最初から諦めていることと同じ。
だから僕は手を伸ばそう。
きっと光は僕の手を取り、包み込んでくれるから。
「黒。君はこの色に何を思う」
2月の風は僕と彼女の肌を容赦なく叩く。
校舎の屋上にいるなら尚更のことだった。
スカートからすらりと伸びる彼女の足が赤く色づいてるのが今の寒さを語っている。
息衝けば、白い吐息が空に舞い、消える。
「黒、ですか? んー……不安や恐怖とかのイメージかな」
彼女は笑う。
実に愉快そうに。
その笑顔が普段とはまるで違ってみえて、子どもっぽくて少しどきっとした。
「ああ……実に馬鹿正直で結構だ。君ならそう答えると思ったよ」
「それは馬鹿にされているのか、貶されているのか。どっちでしょう」
「どっちも同じ意ではないか?」
「つまりそういうことです」
「ふふっ、君らしくてよかったと私は言っているんだよ」
素直にそう言ってくれればいいのに、と心の中で一人愚痴た。
彼女はいつも素直じゃない、というか捻くれている。
「それで、先輩はどんなイメージを持っているんです」
「私か? そうだな、包み込んでくれるような安堵、優しさ。そんなところだろう」
「安堵に優しさ……僕にはあまり理解できかねますね」
「ふふ、そんなものだよ。色に対するイメージとはまさに十人十色、先人はよく言ったものだな」
「はぁ……」
ふと、彼女は遠くを見据える。
その顔がどこか悲愴で、憂いでいるのが僕は気になった。
「白。君はこの色に何を思う」
彼女は問う。
暗闇は不安だ。
ただでさえ憔悴しきった僕に追い討ちをかけるようで。
息を切らし、どんなに走って逃げようともどこまでも追いついてくる。
出口の見えないトンネルに迷いこんでしまったのだろうか。
光が見えない。
だから黒は嫌いだ。
白。
一筋の光が見える。
たったそれだけの明かりなのに今の僕にはあまりに眩しすぎて、目がくらみそうで。
あれだけ嫌いだった黒が、遠い過去に思えて、懐かしくて。
それでもやっぱり僕は求めずにはいられない。
手を伸ばしたら、あの光を掴むことはできるのだろうか。
可能性は否定することは、最初から諦めていることと同じ。
だから僕は手を伸ばそう。
きっと光は僕の手を取り、包み込んでくれるから。
「黒。君はこの色に何を思う」
2月の風は僕と彼女の肌を容赦なく叩く。
校舎の屋上にいるなら尚更のことだった。
スカートからすらりと伸びる彼女の足が赤く色づいてるのが今の寒さを語っている。
息衝けば、白い吐息が空に舞い、消える。
「黒、ですか? んー……不安や恐怖とかのイメージかな」
彼女は笑う。
実に愉快そうに。
その笑顔が普段とはまるで違ってみえて、子どもっぽくて少しどきっとした。
「ああ……実に馬鹿正直で結構だ。君ならそう答えると思ったよ」
「それは馬鹿にされているのか、貶されているのか。どっちでしょう」
「どっちも同じ意ではないか?」
「つまりそういうことです」
「ふふっ、君らしくてよかったと私は言っているんだよ」
素直にそう言ってくれればいいのに、と心の中で一人愚痴た。
彼女はいつも素直じゃない、というか捻くれている。
「それで、先輩はどんなイメージを持っているんです」
「私か? そうだな、包み込んでくれるような安堵、優しさ。そんなところだろう」
「安堵に優しさ……僕にはあまり理解できかねますね」
「ふふ、そんなものだよ。色に対するイメージとはまさに十人十色、先人はよく言ったものだな」
「はぁ……」
ふと、彼女は遠くを見据える。
その顔がどこか悲愴で、憂いでいるのが僕は気になった。
「白。君はこの色に何を思う」
彼女は問う。
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