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くらしかるあわー
物好きの物好きによる物好きの為の毒電波発信のべる。
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2010/03/17 (Wed) 15:38
 

「……あたしの友達に何してるの」
声が聞こえた。
あまりに低く、感情を殺したような冷たい声で、誰の声なのかはじめは分からなかったけどすぐに瑛夏のものだと分かった。
さっきまであんなにも優しい声だった時の瑛夏とは対照的過ぎて、その変化に私は少しの恐怖を覚えた。
「……秋畠、瑛夏!」
瑛夏の登場は二人には予想外だったらしい。
そうよね、私が誰かと一緒にいるなんてクラスメイトの人なら絶対に驚くはず。
でも……この二人の驚き方はそんなことに驚いているのではないと思った。
まるで「瑛夏がそこにいること自体がおかしい」みたいな、そんな感じだった。
「どうして、あんたがここにいるの?」
「それはお互いさまでしょ」
「……ちっ」
この三人の間に何かしらの因縁があるのかもしれない。
でも、私には分からない。
分かるはずがないんだ。
「まぁ……いいわ。樹、行くよ」
「はいはーい」
御咲まなかのほうは相変わらず厳しい顔つきのまま、藍澤樹は何事もなかったかのようにいつもの能天気そうな顔に戻して出て行った。
そう。
それだけならよかったのに、出て行く際に言った藍澤樹の言葉がやけに私の脳にこびり付いて離れなかった
「ねえねえ、まなちゃんまなちゃん」
「ん?」
「……あいつ、殺さなくてよかったの?」

「……瑛夏」
「えへへ、ごめんね! 気にしなくていいから」
また、無理に笑顔をつくる瑛夏。
そんな、そんな辛そうな顔で笑わないで。
「……私、ね。瑛夏に友達って言われて嬉しかった」
「――っ」
「……時間や月日なんて必要ない、友達って気付いた時にはもう友達なんだね」
「小夜……」
「……だから、瑛夏はもう友達なんだ……って、私は、思う」
精一杯の言葉。
これほど勇気を出したのなんて初めてだと思う。
でも、瑛夏の本当の笑顔を私は見たいから、だから、私は伝える。
「ば、馬鹿だなー! 小夜はほんとに馬鹿なんだからっ!」
えへへ、と笑う瑛夏の顔にはかすかに涙が滲んでいた。
今の笑顔は瑛夏の本当の笑顔なんだと思う。
だって、今までで一番いい表情をしているから。
私も、私も……瑛夏の笑顔、好きだよ。
「小夜、少し歩かない?」
涙をふいて、瑛夏は私の手を取ってきた。
瑛夏の手は驚くほど冷たくて、小さくて、でも握られた手から瑛夏の温かな心が伝わってきてる気がした。
「……うんっ」
それに応えるように私も瑛夏に握られた手を強く握った。
私の心が瑛夏に伝わりますように。

曇天の空から、小さな雪の結晶が舞っていた。
いつもは鬱陶しいと感じていたけど、今はそんな風には感じなかった。
心の変化ってこんなところにも出てくるのね。
それも全て瑛夏のおかげ。
手を繋ぎながら、そんな隣の瑛夏を見た。
すごく楽しそうで、すごく幸せそうな顔。
まるで、さっきのことなんてはじめから起きて無くて、私の妄想だったんじゃないかって思うくらいに。
だから私はさっき起きたことは追究しようとは思わなかった。
言ったら、瑛夏を失いそうで、怖くて。
「ん、小夜? どうしたの、私の顔に何かついてる?」
「……なにそのベタベタなセリフ、何もついてないわよ」
「えへへ~」
今なら、はじめて瑛夏に会ったときに言われた言葉をはっきり答えられる気がする。
こんな人生でも……うん、すごく楽しいよ。

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