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くらしかるあわー
物好きの物好きによる物好きの為の毒電波発信のべる。
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2010/03/15 (Mon) 23:07
 

「あたしは××中学に通う2年生だよ」
「××中学って……私と同じ中学!?」
危なく口に含んでいたコーヒーを噴き出しそうになったじゃない……
正直、瑛夏の話に驚きを隠せなかった。
「だから言ったでしょ? 初対面じゃないって」
ね、と小さく首を傾げてにこりと瑛夏は微笑む。
なるほどね……学校で見られているなら確かに初対面ではない。
あくまで、瑛夏にとっては、だけど。
事実、私は今の話を聞いても尚、分からないからね。
「……そうね。でも、うちの学校はそんな可愛い制服じゃないよね?」
「うんっ、だってこれ、アニメのコスプレ衣装だもん」
「コスプレ……衣装?」
「今あたしがハマってるアニメに出てくる学校の制服なの! 市販で既にあるんだけど微妙に色が違ってたり、生地が安っぽかったりするから、これはあたしが自作したんだよー! えへへ、結構自慢の力作だったりするんだー」
「……」
身を乗り出して瑛夏は私にコスプレ衣装について熱弁をふるう。
たぶん今日会ってから一番眼がきらきらと輝いてたと思う。
「あれ、どうしたの小夜? もしかして、引いちゃったとか?」
「……ううん、あまりに瑛夏が活き活きとしていたから少し圧倒しちゃっただけ」
「小夜はアニメとか見ないの?」
「子どもの頃は見てたけど、今は見ないかな」
「えー!? 勿体無いよー! ねね、小夜もアニメみて一緒にコスプレしようよっ!」
「……え?」
一瞬瑛夏が何を言ったかよく分からなかった。
「小夜、可愛いから似合うと思うんだけどなー」
「……遠慮する」
「ぶー! あたしは諦めないからねー!」
ぶすーっとしかめ面をつくる瑛夏。
小さな子どもみたいに駄々をこねて両手をぶんぶん振り回すのはまわりに迷惑だからやめてよね……
それにしても……私がコスプレなんて、考えただけで背筋が凍ったようにゾッとする。
「あはは……諦めてもらっていいわよ」
「あ、ようやく笑ってくれた!」
「え?」
「今日、あたしたちが会ってから一度も小夜は笑ってなかったからね。うんうん、やっぱり人は笑顔が一番だね!」
「……」
笑顔。
そういえば、いつ以来から笑ってなかったんだろう。
少なくとも中学に入る頃には笑わなくなっていたと思う。
他人が私の笑顔なんて欲してないから。
私が私の笑顔なんて欲してないから。
だから、私は笑顔を捨てたのかな。
だいぶ昔に捨ててしまったものを、瑛夏はこんな短時間でいとも簡単に見つけて、私に届けてくれた。
「……小夜?」
「……ううん、なんでもない。なんでもないの」
瑛夏はそんなつもりで言ったわけじゃないと思う。
でもそう考えてしまったら、自然と、私の瞳からは大粒の涙が出てきた。
笑ってるのに、涙が出てくるなんておかしいわね、私。
「……小夜の笑顔、あたし好きだよ」
どうして瑛夏はこんなにも綺麗な言葉を言えるの。
ほんと、ほんとに……人の皮を被った悪魔だ。

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