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くらしかるあわー
物好きの物好きによる物好きの為の毒電波発信のべる。
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2024/05/05 (Sun) 20:01
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2010/03/11 (Thu) 18:17
 

「……そこそこに」
無難な言葉。
別に答える義理なんてなかったけれど、答えなかったらこの目の前にいる少女はいつまでもついてきそうな気がしたから答えただけ。
「嘘」
「……」
それは既にあらかじめ答えを用意していたくらいに素早く、端的な言葉だった。
「全然楽しそうに見えない。嘘は幸せを逃す言葉だよ」
「そんなのはあんたの勝手な決め付けでしょ。そもそも何、私に何か用? 無いよね、私たち初対面なんだし」
まただ。
また、私はこうやって人を突き飛ばすような言葉しか吐けないでいる。
多少の苛立ちもあったのかもしれない。
初対面の人間に私の人生を勝手に決め付けられて、それで……
「瑛夏」
「……はい?」
「秋畠瑛夏。あたしの名前」
「だから……なに?」
「あんたじゃないよ。それに、初対面でもないし」
「……」
瑛夏、と名乗った少女の言葉に面食らってしまう。
少なくとも私は知らない。
記憶にも、会ったこともない。
「名前」
「え?」
「そっちの名前。あたしが言ったんだから、そっちも言うのが普通でしょ?」
「……古森、小夜」
「小夜ね、うん、覚えたよ」
なんで私は律儀にもこの少女に自分の名前を教えてしまったんだろうか。
別に覚えられて困ることはない。
どうせ今日だけ。
どうせ今だけ。
今後会うことなんてどうせない。
だって、私はいつも一人だから。
「それで、小夜。本当は人生なんて楽しくないなんて思ってるんでしょ?」
「……っ」
また、こいつは、人の中に入ってこようとしている。
他人の家に土足であがることがいけないことは小さな子どもだって分かるはず。
それを、この瑛夏と名乗った少女は土足であがっては、あまつさえ荒らそうとしている。
「あんたには関係ないでしょ……いい加減にしないと怒るよ」
「それは小夜もでしょ。あたしの名前は瑛夏っていうの」
「じゃあ、瑛夏、いい? 私は他人からの悪口なんてどうでもいいと思ってるの。でもね、他人に同情されたり、勝手に私の人生を決め付けられるのが大嫌いなの!」
言った直後に、思わず声を荒げて言ってしまった自分がいたことに気付いた。
ちらりと、廊下を歩く人が私たちを見てはすぐに視線を外していった。
そう。
それでいいの。
自分とは無関係な人とは関わり合いたくない、それが「普通」なんだと思う。
だけど、目の前にいる少女、瑛夏は私の気持ちとは裏腹に澄んだ笑顔で私を見ていた。
「やっと、名前で呼んでくれたね」

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