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くらしかるあわー
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2024/05/06 (Mon) 00:15
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2010/03/10 (Wed) 15:53
 

缶コーヒーの温かさを感じつつ空を見上げれば、相も変わらず濁りきったように灰色がかっている。
都会とも言えず、かといって田舎とも言えない仙台の曖昧な街並みを現しているようだった。
灰色の空は晴れることを知らず、今にでも雪が降り出してしまうんじゃないんだろうか。
この肌を突き刺すような寒さに加えて、雪なんて降られた日には正直やってられない。
ずずず、とこの短時間で既に冷え切った缶コーヒーを飲み干して、私は立ち上がりまた当てもなく歩き出した。
ふと、街灯についてるプレートに目がいった。
「初恋通り……私には残念なくらい無縁なことね」
いよいよ雪が降り出してくる空を前に、立ち止めていた歩みを進めた。

私、古森小夜はどこにでもいる中学2年の女子だ。
少なくとも私自身はそう思ってる。
協調性が無いとか、気持ち悪いとか、陰気臭い、あげればキリがない程言われているけど、それでも私は普通の女子だと思ってる。
そこに他人の評価なんて関係ないし、私には必要ない。
だから、友達がいなくても私は平気なんだ。
とあるビルの2階にある廊下の壁に身を寄せて、そんな「私」らしくない考え事をしていた。
冬は寒さのせいで思考を麻痺させる。
だから、どうでもいいこともふとした瞬間に考えてしまう。
興味なんてないんだけどね。
本日2本目の缶コーヒーをずずずと音を立てて飲んでいた時だった。
どこかから誰かに見られているような強い視線を感じた。
そういえば前にもこんな事があったっけ。
それがいつだったかは忘れたけれど。
見られているけど、相手は近づかない。
付かず離れずの一定の距離を保った視線。
正直いって、あまりいい気はしない。
「……」
ゲームセンターに飲食店と人がいるあたりを見回してみたけれど、誰も私のことは見ていない。
それぞれが自分たちの世界に没入していて、それ以外は風景扱いだ。
私の気のせいだったのか……。
最後にもう一度だけ見回してみた。
「……っ」
目が合った。
ちょうど真正面、ゲームセンターの最奥から一人の女子がこっちを見ていた。
見ていた、という表現よりも視ていたと言ったほうが的を得ているくらいにその視線は力強かった。
そのあまりに力強い視線に圧倒されて、私もしばらく視線を外すことができなかった。
視線の主はどんどんと近づいてきて、ついには私の前まで寄ってきた。
綺麗な顔立ち、いや、綺麗と言うよりも愛くるしい顔と言ったほうがいいのかもしれない。
黒く透き通った目に、ふわりとウェーブがかかった茶色のレイヤーボブ。
歳は私と同じくらいで、この辺りでは見たことない学校の制服を着ていた。
「な、なに……?」
「世界は美しく、そして人生はかくも素晴らしいなんて誰が決めたんだろうね?」
「……はい?」
普通に考えて初対面の相手に聞くような言葉ではなかった。
顔は可愛いけど、危ない人なんじゃないかと思うほどに。
「生きることは楽しいこと?」
その少女は私に問いかけてきた。

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倉子かるです。
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